SCT(文章完成法)の概要

SCT(sentence completion test)は、刺激語である未完成の文章を提示して、文章の後半を自由に書き加え、完成させることでクライエントのパーソナリティを把握する投影法の検査です。1897年にエビングハウスが開発したものが由来と言われています。

クライエントの意識と無意識の中間レベルである前意識を投影する検査に位置付けられています。

分析方法には、形式分析(反応の長さ、時間、文法の誤りなどを分析する)と、回答の内容そのものから分析する内容分析がありますが、内容分析が一般的です。

書かれた内容から、知的面、感情面、身体面、社会面、家庭面といった、外的、内的状況を具体的に把握できる検査として、他の心理検査とともにテスト・バッテリーに組み込まれることが多くなっています。

PFスタディとアグレッションの概要

PFスタディ(Picture Frustration Study )1948年、米国のローゼンツヴァイクによって考案された投影法のパーソナリティ検査です。

自由連想法TAT(主題統覚検査)が参考になっています。

自由連想法・・ある言葉(刺激語)を聞いたときに、心に浮かぶままの自由な考えを連想していく発想法。刺激語と連想語の関連を分析して、人の潜在意識を分析する。初めはフロイトの精神分析によって用いられた。

PFスタディの概要

PFスタディは、欲求不満場面が書かれた24のイラストに対するクライエントの言語的な反応から、クライエントの欲求不満への対処とパーソナリティの傾向を明らかにします。

まず、検査を受ける人はフラストレーションを受けるような人物が書かれた24枚のイラストを見て、フラストレーションを受けた人がどのような返答をするかを空白の吹き出しに書き入れます。自分だったらどう答えるかではなく、イラストの中の人がどう答えるか、です。記入された発言をもとに評定を行います。

24枚のイラスト  
・他人から害を被ったり攻撃を受けた自我阻害場面(原因が他者にある)
・欲求不満が喚起される超自我阻害場面(原因が自分の中にある)

PFスタディの解釈

吹き出しに書かれた言葉から、アグレッションの方向アグレッションの型が分類されます。
アグレッションとは直訳すれば攻撃性ですが、ここでは主張的な態度です。

アグレッションの方向、アグレッションの型ともに3種類に分類されます。

3つのアグレッションの方向
他責的 他者を責める傾向
自責的 自分を責める傾向
無責的 誰も責めず、不回避と考える傾向

無責とは攻撃性がないのではなく攻撃性の回避、抑圧ととらえます。

3つのアグレッションの型
障害優位型 障害の指摘に重点をおく
自我防衛型 直接的な自我防衛をする。
要求固執型 問題の解決に重点をおく

この3×3の9分類で、クライエントのパーソナリティを分類します。

その他にはGRC(集団一致度)を解析します。GRCが低い場合は集団への適応の困難さ、高すぎる場合は過剰反応からの不安や神経症との関連が示唆されます。

TAT(主題統覚検査)とマレーの欲求圧力理論

TAT(主題統覚検査)マレーらによって開発された投影法のパーソナリティ検査です。

テストは、人物を含んだ、さまざまな受け取り方ができるあいまいな状況の30の図版と1枚の白紙から何枚かを被験者に見てもらい、その絵から物語を自由に語ってもらいます。

マレーの欲求圧力理論(欲求圧力分析)をもとに、被験者が葛藤状況をどのように認識し、どのような対処行動をとっているか、という傾向から、パーソナリティを明らかにしていきます。

マレーの原法では2日間に分けて行いましたが、現在では一回で行われることがほとんどです。

TATの30枚の図版には、少年用(B)、少女用(G)、男性用(M)、女性用(F)に分けられます。

また児童用のTATであるCAT(児童統覚検査)は10枚の図版からなり、主人公に動物を用いて、子どもに親和性が高く出来ています。
高齢者用のTATであるSATやGATは65歳以上が対象となり、16の図版からなり、登場人物に高齢者が多く登場するようになっています。

※マレーの欲求圧力理論

マレーは欲求と圧力というふたつの力でパーソナリティを力動的に捉えました。

欲求・・人を内から動かす力
圧力・・人を外から動かす環境の力

欲求には食欲求、達成欲求、支配欲求などがあり、圧力にはこれらの欲求を促進させるようなプラスの圧力と、妨害するようなマイナスの圧力とがあります。

たとえば、追従的な人は支配欲求に対して促進的圧力であり、攻撃的な人は支配欲求に対して妨害的圧力となります。

マレーは人のパーソナリティを理解するために、その人の過去、現在、将来についての欲求と圧力を知ることが重要であるとしました。

ロールシャッハ・テストの特徴

ロールシャッハ・テストはスイスの精神科医ロールシャッハによって考案されたパーソナリティ検査です。投影法のテストになります。

インクを垂らした紙を半分に折って、開いた際に出来る左右が対称なしみ模様(無意味図形)の図版10枚を使います。

その図版を一枚づつ見せて、それが何に見えるかを口頭で答えさせます。(自由反応段階)

その後、検査者はその図版のどのような特徴がそのように見えたのかについて質問をします。(質問段階)

その質問への回答から、

・しみのどこに注目したのか・・反応領域(全体、大きい部分、小さい部分など)

・どのような特徴からそのように考えたか・・反応決定因(色彩、運動など)

・しみをなんと意味づけたか・・反応内容(人、動物、抽象的なものなど)

などをスコアリングして手がかりとし、さらに反応時間やそのときの表情やしぐらなども考慮して、心の状態を読み解いて行きます。

片口法と包括システム

ロールシャッハ・テストはクロッパーやラパポートにより、様々な実施法に発展していきましたが、それらを統合したのがエクスナーで、そのテスト方法は包括システムと呼ばれます。

日本ではクロッパー法をベースにした片口法包括システムが普及しています。

投影法(投映法)よる心理検査の特徴

投影とは

心理学における投影とは、自分のある資質や心の欲求を認めたくないときに、自分自身を守るため、防衛機能として他人にその悪い面を押し付けてしまう、責任転嫁のような行動を指します。普通は悪い面を指すことが多いですが、良い面の投影もあります。

投影法(心理検査)

人はあいまいで不安な状況におかれると、その状況を自分なりに意味づけしようとします。
こういった意味づけには、その人の意識的だけでなく心の奥の無意識の欲求や動機、葛藤などが反映されやすくなります。

この心の特徴を生かし、視覚的や言語的にあいまいな刺激をクライエントに提示して、それに対する自由な反応を手掛かりに、クライエントの心の中の動きや性格をとらえようとする方法が投影法です。

投影法の長所・メリット

投影法での質問にはクライエントはどのように答えても構わないという自由さから、決まった形の質問になっている質問紙法で起こりやすい検査への構え(自分の欠点などはみせたくないという心理など)や意図的な結果の操作が少なくなります。

また、他の調査ではとらえられない無意識水準の心の深層面まで触れて切り込むことが可能になります。

投影法の短所・デメリット

無意識の奥まで切り込めるという反面、その検査結果の分類や解釈に検査を行う医師やカウンセラーなどに高いスキルや熟練が求められること、またその解釈には医師やカウンセラーなど検査を行う人の主観が入りやすい点が課題となります。

主な投影法検査

代表的な投影法検査としては、ロールシャッハ・テスト、SCT(文章完成法テスト)、TAT(主観統覚検査)、P-Fスタディ、DAM(グッドイナフ人物画知能検査)、バウムテストなどがあります。

MPI(モーズレイ性格検査)と2つの次元の概要

MPI(モーズレイ性格検査)は1950年代にアイゼンクが開発した質問紙法のパーソナリティ検査です。

その特徴は、アイゼンクの性格理論にそって、人の性格を2つの次元からとらえるところにあります。

モーズレイ性格検査の2つの次元

N尺度(神経症的傾向)
E尺度(外向性-内向性傾向)

検査では、この2つの尺度各24項目に中性項目12、L尺度(虚偽発見尺度)20項目を加えて、合計80項目があります。

「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3件法です。
16歳以上の成人に適用できます。

クライエントのパーソナリティ診断、心理葛藤や情緒状態の確認、性格把握など、様々な場面で活用されます。

NEO-PI-R検査とビックファイブ理論の概要

NEO-PI-R(NEO Personality Inventory Revised)はパーソナリティ検査のひとつです。
開発者はコスタ&マックレー。その特徴はビックファイブ理論にもとづき、人の特性の5次元を測定するというところにあります。

ビックファイブ理論

ビックファイブ理論とは、人の性格に関する学説で、人の個性は5つの因子によって分類することが出来るという理論です。この5つの因子をビックファイブの5因子と言います。

ビックファイブの5因子

Neuroticism(神経症的傾向)・・ストレスやネガティブな刺激に対する反応の強さ

Extraversion(外向性)・・積極性や社交性、行動的な態度。

Openness(開放性)・・知的好奇心があり、想像力や感受性が高く、新しいものや考えへの開かれた態度。

Agreauleness(調和性)・・他者への共感や協調性、配慮や思いやりの態度。

Conscientiousness(誠実性)・・良心や達成力、責任感の強さ、精神のコントロール力の強さ。

NEO-PL-R検査の項目数と下位尺度

NEO-PL-Rは240項目からなり、「非常にそうだ」「そうだ」「どちらでもない」「そうでない」「全くそうでない」の5件法の尺度です。
5因子それぞれの下位尺度は以下のように6つづつになっています。

・N(神経症的傾向):不安、敵意、抑うつ、自意識、衝動性、傷つきやすさ
・E(外交性):暖かさ、群居性、断交性、行動性、刺激希求性、よい感情
・O(開放性):空想、審美性、感情、行為、アイディア、価値
・A(調和性):信頼、実直さ、利他性、応諾、慎み深さ、優しさ
・C(誠実性):コンピテンス、秩序、良心性、達成追及、自己鍛錬、慎重さ

この5×6の合計30の特性から、個人のパーソナリティを詳細に分析することが出来るのがNEO-PL-Rの最大の特徴です。

不安検査(MAS・STAI・LSAS-J・CAS)の概要

心理検査・質問紙法の中で、不安症状や傾向を測定するものを紹介します。

MAS(顕在性不安尺度)

テーラーMMPI(ミネソタ多面人格目録)の中の50項目を中心にして作成した、不安を測定するための検査です。
日本語版では、L尺度15項目を加えた65項目で構成されています。

顕在性不安とは、自分自身で身体的・心理的な不安の兆候が意識化されたものを指します。

適用範囲は中学生以上ですが、児童用(CMAS)も作成されています。

「心配ごとで眠れぬようなことがあるか」といったような質問から構成されていて、日本語版ではI~V段階に得点化されます。

STAI(状態-特性不安検査)

スピルバーガーによって作成された不安を測定する検査です。

状態不安特性不安の両方を測定するのが特徴の検査です。

状態不安:今この瞬間に感じている不安。一時的な情緒状態であり、感情状態と生理反応からなります。

特性不安:普段感じている不安。不安状態に対する個人の反応傾向で、比較的安定した性格傾向を意味します。

STAIにおいて、状態不安と特性不安の質問がそれぞれ20項目、全40項目から構成されます。

LSAS-J(リーボビッツ社交不安尺度)

リーボビッツによって考案された社会不安症を測定する尺度の日本語版です。

24項目の質問から構成され、重症度の評価が可能です。

CAS(不安測定性格検査)

キャッテルが作成した40項目の不安を測定する尺度です。適用対象は中学生~大学生となります。

エゴグラムとTEG(東大式エゴグラム)

エゴグラム

エゴグラムとはエリック・バーンの創始した交流分析における自我状態(P親、A大人、C子ども)をもとに、バーンの弟子であるデュセイが考案した性格診断法。
5つの自我状態にわけて、それぞれのバランスを視覚化したものです。

5つの自我状態

デュセイのエゴクラムでは次の5つの自我状態を設定しています。

・CP 批判的な親
・NP 養護的な親
・A 大人
・FC 自由奔放な子ども
・AC 順応した子ども

これら5つの自我状態が放出する心的エネルギーの高さをグラフ化したものです。

CPとは、厳しい心。自分の価値観を正しいものと信じて譲らず、責任を持ち、他人に批判的。

NPとは、寛容性。優しい心。愛情深く、思いやりがあり、世話好きで親切。この部分が低いと冷淡になる。

Aとは論理性。論理的で現実を重視し、聡明で合理的。この部分が低いと、非合理的な性格になる。

FCとは、奔放性。自由奔放で明るく好奇心旺盛。自我中心性で自己中心的。この部分が低いと閉鎖的で暗い性格。

ACとは順応性。協調的な心。他人の評価を気にする。言いたいことを言わないで我慢し、従順で遠慮がち。この部分が低いとマイペースな性格になる。

エゴグラムではこれらの数値を棒グラフや折線グラフで表します。

TEG(東大式エゴグラム)

TEGとは、上記のエゴグラムをもとに、1984年に東京大学医学部が開発したパーソナリティ検査です。

TEGは53問の質問項目からなり、「はい」「いいえ」「どちらでもない」の3件法で回答します。また、妥当性尺度があります。所要時間は10分ほどです。

MMPI ミネソタ多面的人格目録の概要

MMPI(Minnesota Multiphasic Personality Inventory)は、1943年にミネソタ大学のハサウェイとマッキンレーによって作成された550問からなるパーソナリティ検査です。

精神病理的な不適応を多面的に識別することにより、診断に役立つ目的で作成されました。新規傾向、うつ傾向、精神病質、ヒステリーなどの臨床尺度と、回答者の態度を測定する妥当性尺度から構成されています。信頼性が高くよく用いられる検査のひとつです。

適応年齢

MMPIの適応年齢は原版では16歳以上、新日本版では15歳以上(小学校卒業程度の読解力あり)となっています。

質問数と所要時間

MMPIの項目数は550項目であり、所要時間の目安は1時間です。略式版は263項目で、40分の目安となっています。

MMPIの尺度

4つの妥当性尺度
MMPIの妥当性尺度は、回答者の回答が歪曲されていないかを確認します。また妥当性尺度から回答者の現在の状態と解釈します。

「?尺度」妥当性の疑わしさの尺度
「L尺度」虚構の尺度。自分を好ましく見せる傾向。
「F尺度」精神障害の程度や非協力の傾向を示唆。
「K尺度」検査への警戒や自己防衛を示す。

10の臨床尺度
心気傾向、うつ傾向、精神病質、ヒステリーなどの尺度。健常群と臨床群のあいだで有意差が認められた質問項目で構成されているため、スクリーニング検査として有効。